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『見たこと作文でクラスが動く』 [書籍]




『見たこと作文でふしぎ発見』(学事出版)の著者、上條晴夫さんが本書の「まえがき」を書いています。上條さんによれば、本書は「見たこと作文の実践事例集」であり、「授業づくりネットワーク運動の夏の集会で発表されたレポート群の中から誕生した」とされています。

もちろん、本書の中心となるのは多くの実践者による記録ですが、それぞれの記録には、上條さんによる「見たこと作文の秘密」という解説が添えられています。この解説を読み解くためにも、まずは、上條さんによる「第1章 見たこと作文の特徴」を見ておきましょう。第1章の項目を引用します。

(1)「材への指さし」がふしぎ発見を引き出す!
(2)教師の「語り」が子どもたちの追究を促す!
(3)見たこと作文は学級の「物語」を創り出す!

この三つの項目について、大内善一さんの『「見たこと作文」の徹底研究』(学事出版)を参照しながら見ていきましょう。

(1)は「材への指さし」です。

 見たこと作文は、「見たこと」に焦点を当てた作文指導の方法である。
 作文は、短くていいこと。
 その代わりに、毎日続けることを宣言する。
 次に、材への指さし。つまり、以下のような土俵づくりの作業を行う。
『次の種は、何の種でしょう』
 羽のような形をした種の図を、黒板に大きく描く。
「エーッ、そんな種あるの」
『あります。クルクルと回って、木から落ちてきます』(演示してみせる)
 教室に笑いが起こる。
「何かな」
「あっ、カエデじゃない!」
「カエデだ!!」
『種って、色々あるんだよね。君たちも、こんなおもしろい種、見つけられるかな』

このようなやり取りを通して、子どもたちは「ドングリ」「アメリカセンダングサ」「オシロイバナ」などの種に目を向けるようになります。こうした作業を、上條さんは「土俵づくり」と呼んでいます。この「土俵づくり」が「材への指さし」です。

「材」について、大内さんは「『発想』の技術」と関連させています。「見たこと作文」では、「素材」(=「ネタ」「材」)は教師が与えます。そして、「素材」をもとに書かれた作文から「題材」(=「ハテナ」)が引き出されます。つまり、「見たこと作文」は、「従来の課題作文と違って、いわゆる『題材』は、クラス全体の共同作業の下で決定されてい」きます。しかし、「題材を完全に子供たちに自由に決めさせる自由作文」ではありません。そこで、大内さんは「『見たこと作文』のことをあえて一種の課題作文」としています

この「材への指さし」について、大内さんは「追究を促す指導過程」においても「ネタ」開発の問題として、本書に収められている実践事例を取り上げて考察しています。「見たこと作文」において、「材」は大きなポイントの一つだと思われます。

(2)は教師の「語り」です。

 教室では、毎日、「読み聞かせ」をする。
 読み聞かせは、作品を書いた子どもと教師の「一対一」の対話(語り)である。
 と同時に、それを聞くクラスの子どもたちへの強烈なアピールである。見たこと作文では、一人の子どもの発見、ハテナ、追究、書き方などが、どんどんと、クラスの中へ波及する。
 誰の作品を取り上げるか。クラスの中のつながりを意識して行う。

この「読み聞かせ」について、大内さんは「指示・発問・説明・助言の技術」の中で取り上げています。すなわち、その優れた教育的機能を「作文に顕れた子供の思考や認識の体制を、指導者自身が自らの肉声を通して追認し、同時にそれを他の子供たちの内面に送り届けてやる」とまとめています。もちろん、「読み聞かせ」だけではなく、その作文の良さを「説明」しているのですが、この「説明」の効果を大きく増幅しているのが、その前の「読み聞かせ」すなわち「語り」だというのです。

どの作文を取り上げるかも大きな問題ですが、どのように取り上げるかも、大切なポイントとして意識したいものです。

(3)は学級の「物語」です。

 唐突な言い方だが、見たこと作文というのは「物語」である。しかも教師の解釈力に応じて、どんどん膨らんでいく物語である。
 出発点は、個々の子どもの書く「見たこと作文」である。
 教師の子ども理解と材の可能性を解釈する力が、その作文を、学級の中へ媒介する。
 子どもたちは、友達の作文に触発される。
 対立場面にも立たされる
 例えば、本の中に知的好奇心をもって分け入る「書斎派」の子のデータと、机の前を離れて、動き回るのが大好きな「フィールド派」の子の野生の思考がぶつかり合う。
 もちろん、交流も起こる。
 そして、クラスの中には、より大きな「見たこと作文」の物語が創られていく。

上條さんの言う「対立」と「交流」について、大内さんは「追究を促す指導過程」で取り上げています。読み聞かせで取り上げた「ハテナ」に対する指導について、「作文を書いた子供の追究の過程で生じた個別的な問題意識にゆさぶりをかけてやることによって、その問題意識を学級全体のものとしてやる」と考察しています。

さらに、このような「ゆさぶり」を意識した指導が見られるのは、本書の実践事例では限られている点も指摘されています。「見たこと作文」をめぐる論点の一つに、この「ゆさぶり」の問題がありそうです。

以上、三つだけをとっても、「見たこと作文」を含めた作文授業づくり、あるいは授業づくり全般において、さまざまな問題を提起しているように思われます。

まえがき
第1章 見たこと作文の特徴——上條晴夫
 (1)「材への指さし」がふしぎ発見を引き出す!
 (2)教師の「語り」が子どもたちの追究を促す!
 (3)見たこと作文は学級の「物語」を創り出す!
第2章 見たこと作文の実践
 Ⅰ 見たこと帳ドラマ——二年一組、タンポポを追う!……佐藤民男
 Ⅱ 六年生——「あごひげ版」たんぽぽの不思議……中島祥広
 Ⅲ 四年生——ごみ箱から追究が始まる……黒川和彦
 Ⅳ 一年生——じしゃくのふしぎを発見する……杉渕鉄良
 Ⅴ 五年生——魚の追究——魚はかしこいか……塩谷賢司
 Ⅵ 二年生——「見たこと作文」で〈この子〉を育てる……阿部光江
 Ⅶ 二年生——本物のスルメは郵便として送ることができるか!?……野田芳朗
 Ⅷ 二年生——追究! 歯は骨か?……野田芳朗
 Ⅸ 見たこと帳ドラマ 二年生——犬のつめはいくつある!?……佐藤民男
第3章 「見たこと作文」・何が新しいか—「落差」文化から「差異」文化へ———吉永潤
 (1)個性の顕在化装置としての「見たこと作文」
 (2)学校と生活を行き来する「見たこと作文」
 (3)「落差」から「差異」へ
*見たこと作文の秘密(1)〜(9)……上條晴夫
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