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『国語スキルのプログラム学習』 [書籍]


国語スキルのプログラム学習 (1962年)

国語スキルのプログラム学習 (1962年)

  • 作者: 輿水 実
  • 出版社/メーカー: 明治図書
  • 発売日: 1962
  • メディア: -


大内善一さんは『作文授業づくりの到達点と課題』(東京書籍)の「まえがき」において、「作文授業づくりに関してのケース・スタディ」の作業を行う必要性を述べています。『思考を鍛える作文授業づくり』(明治図書)でも行われた検討作業を踏まえて、少し時代をさかのぼり、昭和四十年代以降の実践を取り上げています。

さて、大内さんは『作文授業づくりの到達点と課題』「第Ⅰ章 技能訓練型の作文授業づくり」第一節において「作文スキル学習」を取り上げています。これは昭和三十年代の後半に輿水実さんによって提唱されました。「作文スキル学習」の考察対象として、大内さんは本書を中心的に取り上げています。

そもそも「スキル学習」とは何か。大内さんは本書から「スキルは習慣形成であるから確かに反復修練が必要だが、その反復のしかたにくふうがなければならない」「無意味の反復でなく、だんだんと上達していく、意味のある反復、継続的に向上していく反復が考えられなければならない」「どういう技能を取りあげるか、その技能養成の計画表も、その中の論理的系統だけでなく、根本は児童・生徒の実生活における必要・要求に立つ生活系統が考えられるべきである」という輿水さんの考え方を紹介しています。

このような考え方を作文に適用したのが「作文スキル学習」です。その実際は学年別教材『作文のスキルブック』(公文書院)に現れていますが、大内さんは小学校六学年分の教材に対して、「知識レベル」「技能レベル」「実作レベル」の観点から綿密な分析・評価を加えています。そして、学年によっては「知識レベル」に偏りがちであるという問題点を指摘しています。

このような問題点にも関わって、大内さんは宇佐美寛さんによる「作文スキル学習」批判を取り上げています。「スキル」というものは「学習における能力を内容や状況をぬきにして形式的に名づけることば使用」であり、学習者の思考そのものではないという批判です。(『教授方法論批判』第七章、明治図書。のちに「学習をどう抽象するか」『宇佐美寛・問題意識集8 授業をどう構想するか』
明治図書)

このような批判に対して、大内さんは本書の次の部分を引用しながら、輿水さんが「スキル学習」を提唱した初期の考え方を示しています。

スキルを、まとめて系統的に修練する場合においても、根本に、児童・生徒の実生活における必要が考えられていなければならない。
 固定されたわずかのドリルを、そればかりやっていると無味乾燥になる。それは一般に、そうしたやり方が、生きた生活の目的から離れたものだからである。と同時に、そこに取りあげるスキルが、すでに前の時代の、死んだスキルである場合が多いのである。
 むかし「手紙の書き方」などという本があった。これは How to の本であるが、それをいくら習っても、実際にあまり書かなかったから、役に立たなかった。また、その中で、必ず「拝啓」というはじめのことばや「天高く馬肥ゆる秋になりました」とかいう時候のあいさつが必要だというような、型にはまった、すこし古いスキルばかり教えられる可能性が多かった。
 それに、スキルは、機械的に反復修練しなければ徹底しないというような、まちがった考えがあった。スキルは習慣形成であるから確かに反復修練が必要だが、その反復のしかたにくふうがなければならない。無意味の反復でなく、だんだんと上達していく、意味のある反復、継続的に向上していく反復が考えられなければならない。

宇佐美さんの批判に当てはまる事例もあったけれども、「機械的に反復修練」「無意味の反復」のような問題にまるで無自覚だったわけでもないというわけです。

そして、大内さんは最終的に次の意義を挙げています。

(1)「作文スキル」というものを学力の中核として取り出し、直接的に修練させることで、それまで態度面に偏りがちであった国語科作文領域における「教科内容」を知識・技能面に比重を置く形で明確に打ち出した。
(2)さらに、こうした「教科内容」を「スキルブック」という実際的な教材の形(その個々の在り方については改めていくべき弱点も少なくないが)で提示したことは、当時の国語教育界の中では画期的な意義を持つ。しかも、このスキル教材は、国語科における一つの「授業モデル」に即して使用していけるように作成されている。この点は、今日の作文教材づくり及び作文授業づくりの研究に有益な示唆を与えてくれている。
(3)「スキル学習」を提唱するに際して、スキルの系統を論理的な系統からだけでなく、児童・生徒の実生活における必要という面からも考えていこうとして、その点を「スキルブック」の中でも実際に具現化している。
(4)スキルは反復修練ということが重要な要素になってくるが、この反復を意味のある反復として、継続的に向上していく反復として考え、「スキルブック」にも具体的に反映させている。
(5)「スキルブック」の構成と内容を、作文的状況から切り離された単なる形式的な技能訓練にとどめるのではなく、独立した「実作」としての作文活動と連動させる形で編成すべく努力している。
(6)「スキルブック」に見られるおよそ十五分ほどを単位としての指導区分の設け方、作文スキル習得のための段階的な学習活動の構成なども、今後の作文指導のための小単元づくりに有益な示唆を与えてくれている。

さらに、次の問題点も指摘しています。

(1)「スキルブック」の中味の点で、「知識レベル」での「問い」が多く、実際に書く作業を通しての技能訓練という、文字通りの「スキル」とはなり得ていない部分が目立つという弱点を持っている。
(2)右のような弱点は、当時、「作文スキル学習」の提唱者輿水実自身の中でも「技能」と「技術」との区別が截然とはなされていなかったところから生じていると判断される。「作文スキル」というものを文字通りの学力の中核として定着させるためには、「スキルブック」の教材としての内容を「技術」レベルの言葉、つまり「書く」という行為レベルの言葉で表すことが求められているのである。当時は、この点の認識が不十分であった。

大内さんの整理を、これからの作文授業づくりに活かしていきたいものです。

第一編 国語スキルの種類と考え方
 第一章 国語科とスキル
  一 スキルの本質・定義
  二 スキルと態度・知識
  三 学力・能力の機能的なとらえ方
  四 学習事項としてのスキル
  五 国語科学習のコース
  六 作文単元と指導計画
  七 国語科で取りあげるべきスキル
  八 学力テストとスキル
  九 スキルの直接学習
 一〇 スキルの直接学習における古いやり方と新しいやり方
 第二章 国語科的思考とスキル学習
  一 教科のもつ思考方法
  二 スキルと思考
  三 思考と思想
  四 スキルの系統的なまとめ
第二編 国語スキルとプログラム学習
 第一章 国語科におけるプログラム学習の受け取り方
  一 プログラム学習とティーチング・マシンと学習オートメーション
  二 現在の文章教材によるいわゆるペーパー・マシン
  三 スモール・ステップの取りちがえ
  四 文章教材の多面的統一性
  五 問いの連続性の問題
  六 今までの学習指導案とプログラム学習
 第二章 国語スキル学習へのプログラム方式の適用
  一 プログラム学習と国語科
  二 国語学習の本質的段階性
  三 国語スキルのプログラム学習の方向
第三編 読解スキルのプログラム学習
 第一章 読解スキルの本質と種類
  一 読みの機械的スキルと理解スキル
  二 読みのスキルの一般的な分類法
  三 読解スキルの目的的なとらえ方
  四 学習指導要領のスキルの提出
  五 スキルの学年別重点配当
  六 各学年におけるスキルの指導方法
  七 研究読みのスキル
  八 文学鑑賞スキル
  九 小学校学習指導要領の文学スキル
 一〇 中学校学習指導要領の知的読解スキル
 一一 学校において指導するべき読解スキルとその学年配当
 一二 読解力とスキルの習得
 第二章 読解スキルブック序説
  一 「スキルブック」とは何か
  二 新学習指導要領以後スキルへの関心が強い
  三 スキル教科書でスキル指導をするための混乱
  四 スキルブックとワークブックとのちがい
  五 国語学習のオートメ化への道
  六 国語科学習の近代化、科学化
  七 『スキルブック読解編 高学年用』で取りあげたスキル
  八 スキルの自覚的修練
  九 『国語のスキルブック』の使い方
 一〇 機能別、形態別の読みにおける読解スキルの適用
第三章 学習指導要領に示されている読解スキルのプログラム学習
  一 段落(部分)
  二 文脈
  三 だいじなこと(要点・用件)
  四 必要なところ(細部)
  五 作者が言おうとしていること(意図・中心思想)
  六 作文から読みとれるもの(ねらい・主題)
  七 気持ち(心情・心理)
  八 ようす(場面・情景)
  九 叙述の正確な読み
 一〇 接続語・指示語
 一一 事実と意見
 一二 まとめ(要約)
 一三 順序
 一四 だいたい読み
 一五 考え読み
第四章 学習指導要領に示されていない重要な読解スキルのプログラム学習
  一 話題(トピック)
  二 話題文(トピック・センテンス)
  三 話題段落(トピック・パラグラフ)
  四 中心語句(キー・ワード)
  五 文章構成
  六 文章図解
  七 人(人物・性格)
第四編 作文スキルのプログラム学習
 第一章 作文スキルの本質と種類
  一 作文法の学習
  二 作文スキル学習の出発点
  三 作文と話題文
  四 記述前の指導
  五 最近の作文スキル
  六 日本の作文教育
 第二章 作文スキルブック序説
  一 作文カリキュラムと作文スキル
  二 基礎的スキルと実際的スキル
  三 基礎的スキルの考え方
  四 文章形態とそのスキル
  五 「作文スキルブック」の使用
  六 今後の作文学習指導
第三章 基礎的作文スキルのプログラム学習
  一 絵を見てかんたんな文章を書く
  二 ある形によって、かんたんな文章を書く
  三 書くことがらのはっきりした文章を書く
  四 段落のはっきりした文章を書く
  五 くわしく書いたり、かんたんに書いたりする
  六 順序をたどって書く
第四章 実際的作文スキルのプログラム学習
  一 できごとを書く
  二 観察したことを書く
  三 説明を書く
  四 手紙を書く
  五 記録を書く
  六 報告を書く
  七 感想や意見を書く
  八 物語を書く
索引
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