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『「考える力」はこうしてつける』 [書籍]


「考える力」はこうしてつける

「考える力」はこうしてつける

  • 作者: ジェニ ウィルソン
  • 出版社/メーカー: 新評論
  • 発売日: 2004/04
  • メディア: 単行本


本書の各章には、それぞれのテーマに関係した言葉が冒頭に添えられています。一覧して見てみましょう。

第1章 教師と振り返り
学習者が、自分のパフォーマンスを自己評価できるようになることは大切なことである。そのためには、それを積極的に教えることはもとより、自己分析したり、自問することなどを、教師自らがモデルとして示す必要がある。

第2章 自立した学習者を育てる
すでに必要な思考力と知識をもっている子どもでもよく学べないことがある。その原因の一つは、メタ認知能力がまだ育っていないからである。

第3章 単元を計画する
教科を統合して教えるアプローチは、伝統的な教科の壁の制約なしに、学習者が調べたいと思うテーマについて情報を集めたり、加工したり、洗練したり、発表する機会を提供する。

第4章 交渉
カリキュラムは、もはや誰かによって組み立てられた内容をこなすものではない。それは、進むに従って成長し、変化する作品を(教師と生徒が)一緒になって演じるものである。新しいカリキュラムの定義が求められている。そして、それを評価する新しい方法も見いだされなければならない。

第5章 質問
生徒たちにさらなる質問を促して問題を解決しようとしないで一方的に教えてしまう教師、本来生徒が言うべき質問を自分が言ってしまう教師、そして生徒たちに考える時間を与えずにあまりにも早く自分で答えを言ってしまうような教師であれば、生徒たちは学ぶことを嫌いになってしまう。

第6章 学習日誌
振り返りは書くときの助けになるので大切だし、その逆に書くことは振り返りの助けになるので大切である。

第7章 概念図
暗記を中心にした学習方法と比較して、概念図を用いると複数の正解が可能になる。

第8章 自己評価
学習者が自分の学びに対してより分析的になり、振り返れ、学びをコントロールする自分自身の役割を認識できたとき、自らの学びは改善できるようになる。

第9章 成功の鍵
読み書きをしたり、算数の問題を解いたり、ほかの課題をすることが思考力を養うことは確かである。歩いたり、走ったり、遊んだりすることが体操で必要なスキルを生徒たちに身につけさせることも確かだが、それらをすることで直接的に体操がうまくなるとは誰も思っていない。体操のスキルを自分のものにするためには、生徒たちは正式のトレーニングを受ける必要がある。同じように、思考力を身につけるためには正式な教えを受ける必要がある。

キーワードの一つである「振り返り」については、本書「解説」の冒頭にも、次の言葉が示されています。

振り返りの本質とそのプロセスの理解を高めることは、より意味のある教え方および学び方の基礎である。

この言葉が意味する内容について、もう少し見ていきましょう。

振り返りには、起こったことについての分析や判断が伴われており、学びのすべての面において欠かせないものです。それは、学ぶ前、学んでいる間、そして学んだ後に行われるために思考過程のほとんどに関連することになります。
メタ認知能力(自らの学びについて自ら考える力)とは、各人がもっている思考過程についての知識や、その過程をモニターしたり制御したりする力のことを言います。これには、学習者が自らの学びを分析したり、振り返ったり、モニターすることが求められます。メタ認知、すなわち認識することについての自覚や知識やコントロールは、意識的に振り返った場合の結果と言えます。
メタティーチングとは、教師が自分の考えていることや教えていることを振り返ったり、理解したり、改善しようとしていることを言います。生徒たちに振り返りやメタ認知のスキルの向上を促すのと同じように、教師もまた、振り返ったり、反応したり、改良したりするための時間が必要です。

「振り返り」そして「メタ認知能力」は生徒だけでなく、教師にも求められています。そのため、わざわざ「メタティーチング」という項目が挙げられているのでしょう。

そして、このようなスキルや方法を身につける具体的な例として、「学習日誌」「概念図」「交渉」「質問」の四つが示されています。学習者の学び、そして教師自身の学びをとらえ直すきっかけを、本書の整理が示してくれそうです。

まえがき
解説
パート1 生徒たちに自分で考えさせる教室と授業をつくり出す
 第1章 教師と振り返り
  自分の教え方について考える
  よく問われる質問への答え
  実際に振り返りとメタ認知を導入した授業と学びの具体例
 第2章 自立した学習者を育てる
  ポジティブな学習環境をつくり出す
  年度の当初にすべきこと
  お互いを知りあうための活動
  セルフ・エスティームの活動
  チームづくりの活動
 第3章 単元を計画する
  教科を統合した単元をつくる
  計画の概略
パート2 振り返りとメタ認知能力を磨くための方法
 第4章 交渉
  交渉と授業
  交渉のスキル
  契約と交渉
 第5章 質問
  何故、質問か?
  質問の種類
  質問を効果的に使う
  質問をつくり出す力と思考力を育てるための活動
  自問、自分との対話、自己評価
  フィードバックを提供する
 第6章 学習日誌
  学習日誌とは何か?
  何故、学習日誌を使うのか?
  学習日誌を使う人をサポートする
  学習日誌の種類
  学習日誌を有効に活用する
 第7章 概念図
  概念図とは何か?
  図をつくる際の手順
  教え方の手順
  様々な図の描き方
 第8章 自己評価
  評価と評定の関係をはっきりさせる
  生徒を巻き込む
  自己評価とグループ評価
  ポートフォリオ
  評価基準表づくり
  生徒中心の三者面談
  何故、あえて自己評価やグループ評価をするのか?
 第9章 成功の鍵
  振り返りとメタ認知能力の成長に影響を及ぼす要因
  自立的な学習者としての教師と生徒
  振り返りとメタ認知能力を養うための方法
訳者あとがき
用語解説
ワークシート
参考文献一覧
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『作家の時間』 [書籍]




「作家の時間(ライティング・ワークショップ)とは」において、本書が出版されるまでの経緯が説明されています。『ライティング・ワークショップ』(新評論)で紹介された、「欧米では1980年代から広がりはじめ、今では効果的な書くことの学び方・教え方として定着してい」る方法を、「日本の実情に合わせてできる具体的な実践方法」として示されたのが「作家の時間」です。

「作家の時間」では、「1時間の流れ」は次の三つの活動に分けられます。

(1)ミニ・レッスン     (5〜10分)
(2)書く時間とカンファランス(30分)
(3)共有の時間       (5〜10分)

この三つについて、従来の作文指導との対比を意識して紹介してみましょう。

 ミニ・レッスンとは、「作家の技(より良い作品を書くための技術)」(41〜45ページを参照)や「作家の時間の進め方」などを子どもたちに教える時間です。
 書くための技術を教えるという点では、従来の作文指導と似ているようにも感じます。しかし、大きく違っているのは、子どもたちの現状を踏まえて、何を教える必要があるのかを判断し、それを厳選して教えることです。例えば、「書き出しを変えるミニ・レッスン」をあるクラスでは5月に扱い、ほかのクラスでは9月に扱うということもあります。つまり、子どもたちの実態(創作の様子や作品)が、いつ、どんなミニ・レッスンをすればいいのかを教えてくれるのです。

カンファランスとは、一言で言えば作品について「話し合う」ということです。
「話し合う」という言葉のなかには、「伝え合う」とか「教え合う」、そして「学び合う」という意味あいも含まれます。「話し合う」相手は、先生であったり、友達であったり、保護者を含む多様な読者であったりします。大事なのは、「一緒に作品をよくしていく」ということです。
 カンファランスを行う人が教師であるならば、「教える」←→「やらされる」という子どもとの関係を脱し、教師は共感者であり、よきアドバイザーであり、勇気付ける人としての役割を担います。子どもとその作品に寄り添い、教師と子どもの対話のなかから意欲とスキルを生み出していくのです。それは、提出された作品の悪いところを赤ペンで指摘して、修正や校正を子どもに行わせるといった作文指導とは根本的に異なります。

 作家の時間の最後は、共有の時間で締めくくります。共有の時間とは、何人かの子どもたちに作品(書きかけのものも含みます)を発表してもらい、クラスのみんなで共有することです。この時間になると、みんな書くことを一時中断して教室の前に集まってきます。そして、この日に作品を紹介する子どもは、「作家の椅子」と呼ばれる特別な椅子に座って自分の作品を読み上げるのです。このとき、ほかの子どもたちは「読者」になるのです。

この三つの活動について、藤岡信勝さんの「授業を構成する四つのレベル―教育内容・教材・教授行為・学習者」(『授業づくりの発想』日本書籍)を手がかりに考えてみましょう。

ミニ・レッスンで取り上げる書くための技術は「教育内容」です。ただし、何を教えるかは子どもたちの実態によるので「はじめに教育内容ありき」ではありません。

カンファランスは「教授行為」です。「指摘」ではなく「対話」の姿勢が求められています。

共有の時間における子どもたちの作品は「教材」と言えるでしょう。「今日の共有の時間はどのような学びの時間にしたいか」によって、教師は「読んでもらう作品を注意して選ぶ」必要があります。

いずれの活動においても、「学習者」による学びが大切にされています。なおかつ、「学習者」レベル、すなわち「それによって子どもの状態はどうなるか」という観点において、「作家の時間」の特徴がよく表れているのが「書いている作品でなくて書き手を育てる」という考え方です。

以上の4観点を意識すると、「作家の時間」と従来の作文指導との違いを明らかにできるかもしれません。

その他にも、本書には興味深い内容が多いのですが、もう1点だけ、示しておきます。「クラスづくりと作家の時間」の問題です。

 作家の時間の活動の様子は、実に理想的なクラスの様相を見せています。カンファランスに見られる教師と子どもたちの温かな関係はもとより、ピア・カンファランスでの子どもたち同士の学び合い、教え合い、助け合いなど、お互いが相手のことを尊重するという人間関係は理想のクラス像を具現化しています。
(中略)
 さて、このようなクラスが作家の時間では自然とでき上がってくるのですが、気を付けなくてはならないのは、このような環境をつくり上げていくことは作家の時間だけでは非常に難しいということです。作家の時間の目的は、あくまでも「より良い書き手を育てる」ということです。決して「いいクラスをつくる」ことではありません。作家の時間を行う土台として必要とされるクラスは、日頃の子どもたちと教師、そして子どもたち同士の関係づくりに大きく左右されます。

書くことの授業づくりと学級づくりとの関係をどのように整理していくべきか、大きな課題と言えそうです。

はじめに
作家の時間(ライティング・ワークショップ)とは
 作文の授業って?
 『ライティング・ワークショップ』との出合い
 作家の時間が子どもも教師も変える
パート1 1時間の流れ
 第1章 ミニ・レッスン
  ミニ・レッスンとは
  最初の10時間で行ったミニ・レッスン例
   1時間目 作家の時間とは、作家コーナーとは
   2時間目 作家の時間の1時間の流れ
   3時間目 作家ノートの使い方
   4時間目 書けそうなことリストをつくる
   5時間目 完成した原稿の扱い方、書き出せない子どもへの勇気付け
   6時間目 作家の時間の約束
   7時間目 イメージ・マップを使う
   8時間目 書き出しを変える
   9時間目 友達の力で修正する
   10時間目 読む人が読みやすいように校正する
  作家の技を学ぶミニ・レッスン例
   ミニ・レッスン——様子を表す言葉
   ミニ・レッスン——ストーリー・場面・登場人物
  子どもたちの実態に合わせたミニ・レッスンの構成例
 第2章 書く時間とカンファランス
  書く時間とは
  カンファランスとは
  カンファランスの実際
   子どもの様子に気を配る
   子どもに話しかける・様子を聞く
   よい読者となる
   認め、励まし、称賛する
   書き手としての子どもを理解する
   ポイントを絞ってアドバイスする(提案する)
   子どもの選択・決定を尊重する
  多様なカンファランスの実践例
   題名を書いたものの、書き出しに迷っている子どもに対して(その1)
   題名を書いたものの、書き出しに迷っている子どもに対して(その2)
   書き出しに工夫が見られない子どもに対して
   書けずに困っている子どもへの勇気付け
   校正の必要な子どもに対して
  カンファランスの効果的なやり方の例
   質問する
   インタビューをする
   ブレイン・ストーミングをする
   イメージ・マップをつくる
   声に出して読む
   本を紹介する
   タイム・ラインを使う
   近くにいる子どもや仲良しの子どもに協力してもらう
   グループでカンファランスを行う
   教師がカンファランスしているところを見せる
  カンファランスにおける子どもへの接し方
  ピア・カンファランス
   ピア・カンファランスとは
   ピア・カンファランスの実践例—「大切な友達」という手法を使って
 第3章 共有の時間
  共有の時間とは
  共有の時間のポイント
   一か所に集まる
   よいところを具体的に伝える——ポジティブな時間に
   質問する
   読んでもらう作品を注意して選ぶ
   教師はモデル
  共有の時間のバリエーション
   公開カンファランス
   一人一文紹介
 三つの活動の関連——パート1のまとめとして
   ミニ・レッスンから書く時間とカンファランスへ
   ミニ・レッスンから共有の時間へ
   書く時間とカンファランスからミニ・レッスンへ
   書く時間とカンファランスから共有の時間へ
   共有の時間からミニ・レッスンへ
   共有の時間から書く時間とカンファランスへ
パート2 作家の仕事のサイクル
 第4章 作家の仕事場づくり
  ハード面の条件整備
   スタートするのに最低限必要なもの
  ソフト面の条件整備
   クラスづくりと作家の時間
   教師のあり方と子どもたち同士の関係づくり
 第5章 題材集めから下書きへ
  題材集めとは
  題材集めの実践例
   「書けそうなことリスト」をつくる
   絵本や本から題材のヒントを探す
   イメージ・マップを使う
   絵を描く
   教師によるカンファランスを行う
   ピア・カンファランスをして集める
   タイム・ラインを使う
  下書きとは
  下書きのポイント
 第6章 修正
  修正とは
  カンファランスを通して修正した例
  ミニ・レッスンを通して修正した例
   書き出しを変える
   友達の力で修正する
  修正のポイント
 第7章 校正
  校正とは
  校正の実践例
   校正をするときの子どもの作業の流れ
  ミニ・レッスンの実践例
  校正のポイント
 第8章 出版
  出版とは
  出版の実践例
   印刷・製本する
   時間差出版
   自由参加型定期発行
   表紙をつけて綴じる
   読者の前で読む
   いろいろな出版
 第9章 評価
  評価とは
  作家の時間における評価
  自己評価で育つ
  自己評価を支える教師のサポート
  成績をつける
  評価があるから好きになる
パート3 ある教室の風景〜作家の時間を経験した子どもたちと教師たち〜
 第10章 『ライティング・ワークショップ』に出合って
  作家の時間をはじめたきっかけ
  作家の時間の実践
   最初の1時間
   ひたすら書く時間
   共有の時間
  子どもたちの反応や様子
  作家の時間に取り組んで
 第11章 1年間の子どもの成長〜作文が大嫌いだった粕谷君〜
  作文なんて大嫌い
   最初の作品
  変化
   最後の振り返り
 第12章 教科書作品の活かし方
  『スイミー』に学ぶ
  自分だけのイメージを表現する例示「〜みたいな」「〜のような」をつくってみよう!(表の2)
  文末の表現を工夫しよう(表の5)
  教科書作品を作家の時間にやってみて
Q&A
おわりに
プロジェクト・ワークショップとは
資料1 年度の始めにアンケートをとる
資料2 書く材料をさがす
資料3 カンファランスを記録する
資料4 完成原稿ファイルに目次をつける(1)
資料5 完成原稿ファイルに目次をつける(2)
資料6 評価基準表(低学年)
資料7 評価基準表(中学年)
資料8 評価基準表(高学年)
資料9 自分の作品を振り返る
資料10 学期ごとに振り返る
資料11 1年間を振り返る
私たちが推せんする絵本のリストとその使い方
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『ライティング・ワークショップ』 [書籍]




「ライティング・ワークショップ」とは、どんなものでしょうか。本書では、たびたび比喩を使って説明されています。その中から、スキーを使った三つの比喩を紹介しましょう。

まず、「ライティング・ワークショップ」における教師と子どもの関係を、次のスキーの光景をもとに想像させています。

(1)指導者自身がスキーヤーです。指導者は、なんともかっこいいスキーウエアを身に着け、スキー仲間の言葉で話して、自分たちがもっているスキーへの情熱を余すところなく伝えていました。
(2)指導者たちは、スキーについて「説明する」よりも実際にスキーの「練習をする」ほうがよいと考えていました。スキーについての講義、ビデオ、シミュレーションはせずに、子どもたちにスキー靴の止め具を締めてあげるとすぐにスキーの練習に入りました。
(3)子どもたちがたくさん転ぶと分かっていました。一人の指導者が、ニヤッと笑って言った言葉は印象深いものでした。
 「今日は何度も転ぶことになるよ。誰でも転ぶんだ。今晩は打ち身で痛いと思うよ。でもね、今日の終わりまでにはスキーが滑れるようになっていると保証できるよ」
(4)ほめ方がうまく、ほめることで次の成長へとつなげていました。
 「滑れているじゃない。本当にスキーをするのは初めてなの? 信じられないよ! まるでプロのスキーヤーみたいだよ

また、「校正と言語事項のスキルの学習」において、従来の教え方に慣れ親しんだ人がライティング・ワークショップに抵抗を感じることが多いのを予測して、次のように述べられています。

 最近、私(ジョアン)は18年ぶりにスキーをしました。嬉しかったことに、かつてスキーについて学んだことを忘れていませんでした。それは、自転車の乗り方をいったん覚えるとずーっと乗れるのと似ています。
 しかし、若いころに学んだスキーと現在のスキーが同じでないことに戸惑ってしまいました。一つには、スキーの板自体が変化していました。最近のスキーの板は、以前より簡単にターンができるような形状になっているようなのです。少なくとも、周囲の人はそのように口をそろえて言いました。
 私が過去に学んだスキーの滑り方では、この新しい板はしっくりときません。友人たちは、「新しいスキー板は、君をうまく滑らせてくれるよ。リラックスして板に任せることだね」と私を納得させようとしましたが、私は新しいスキーに対する懐疑的な思いを拭うことができませんでした。「昔のスキー板でうまく滑れたのに、なぜ新しいスキー板で滑らないといけないの」と、納得のできないものを感じました。
 慣れ親しんだものを捨てて新しいことを学ぶとき、初めの間はしっくりとこない感じがしてしまうものなのです。

また、「州規模で実施される作文テストとライティング・ワークショップ」の関係については、次のように述べられています。

 スキーを始めて2、3年が経ち、レースに出場することを決めた初球のスキーヤーがいたと仮定します。スキーヤーは、レースで使われるコースでそのときにうまく滑れれば勝てることを知っています。そのためには、スキーについて今までに学んだすべてのことを、レースの一瞬に、そのコース上で発揮しなければなりません。レースの日に、自分が最高の滑りをするためには何が必要でしょうか。
 スキーのコースを知っておく必要があります。何回かそのコースで試走ができるのであれば、それに越したことはありません。またスキーヤーは、よく身体を休め、適切な食事をとり、自信をもってレースに臨むために、最高のコンディションにもっていけるように務めます。もちろん、よい雪質であることも望んでいます。
 しかし、これらすべてのことは、スキーヤーの経験が豊富であれば意味がありません。ときには楽しんで、ときにはスキーの指導者と一緒に何度も何度も雪山を滑り降りていることが、何よりもスキーヤーに求められていることなのです。
 ライティング・ワークショップは雪山です。子どもたちが心のなかにあることを書き表し、様々な題材を探して書き、一つの題材に対して深く取り組んで書くには時間が必要です。ときには自分で楽しんで書くことも必要ですし、ときには指導者が横にいて、より正確により質の高い作品が書けるように教えてもらいながら書くことも必要です。
 つまり、ライティング・ワークショップのように教師が子どもたちにたくさんの書く時間を定期的に提供しているかぎり、州規模の作文テストでもよい結果が出せるはずだ、ということです。

これらの比喩からもうかがえるように、ライティング・ワークショップは、あくまでも子ども自身の学びを教師がサポートすべきものだと思われます。本書では「作家ノート」「ミニ・レッスン」「カンファランス」など、興味深い手法も紹介されています。けれども、ライティング・ワークショップにおいて何より大切なのは、スキーの比喩に象徴されるような「学び」に対して、どこまで共感をもって取り組めるかどうかなのかもしれません。

はじめに
本書の読み方
第1章 ライティング・ワークショップ
第2章 授業時間と教室のレイアウト
 ライティング・ワークショップの時間
  ミニ・レッスン
  書く時間
  共有する時間
 教室のレイアウト
  クラス全員が集まれる場所
  参考となる本や文房具を置いておく場所
  机の配置
 ワークショップを円滑に進めるために
第3章 短期の目標
 書く時間が好きになるようにする
 子どもたちが安心できる環境をつくる
 実行可能なライティング・ワークショップの運営
 システムをつくる
  完成原稿の提出箱
  創作中原稿ファイル
  完成原稿ファイル
 ワークショップを円滑に進めるために
第4章 ワークショップ開始
 土をほぐす
 1日目を切り抜ける
  ミニ・レッスン
  書く時間
  共有する時間
 2日目
 ワークショップを円滑に進めるために
第5章 書き手とのカンファランス
 書き手とのカンファランス
  聞く
  読者になる
  書き手を理解する
  子どもの状態に敏感に対応する
  うまく書けているところをほめて書き手を育てる
  一つのことだけを教える
 カンファランスで教える内容
  幼稚園から小学校1年生の教室では
  小学校2年生から4年生の教室では
  小学校5年生から中学校2年生の教室では
 カンファランスの効果的な進め方
  カンファランスの時間は短くする
  子どもたちが書いたことだけに限定しないでカンファランスをする
  子どもたちもカンファランスに参加して貢献できるようにする
  教師自身の傾向や好みを知る
  自分が感じたことを伝える
  教師の提案を子どもに押し付けない
 ワークショップを円滑に進めるために
第6章 書くサイクル
 書く前の段階
 下書きをする
 修正をする
 校正をする
 出版をする
 読み直すことの大切さ
 ワークショップを円滑に進めるために
第7章 ライティング・ワークショップのなかでの本の使い方
 読み聞かせ
 子どもたちがそれぞれに読む時間
 本についてのディスカッション
 ライティング・ワークショップのミニ・レッスンで
 本を使う
 子どもたちとのカンファランスに本を使う
 ワークショップを円滑に進めるために
第8章 校正と言語事項のスキルの学習
 校正を教える
 子どもたち用の校正の指針を作成する
 子どもたちに校正の手順を教える
 子どもたちが何を学ぶべきかという必要に応じて教える
 カンファランスで校正のスキルを教える
 ワークショップを円滑に進めるために
第9章 評価と評定
 教える内容を選んでいくための評価
 成績をつける
 州規模で実施される作文テストとライティング・ワークショップ
 ワークショップを円滑に進めるために
第10章 予想される問題とその解決法
 ワークショップが騒がしすぎる
 教師が感心しない題材を子どもたちが選択する
 子どもたちが不適切な言葉を使う
 作品があまりにも早く仕上がる
 書き始めた作品が完成しない
 子どもたちが単調でつまらない作品を書く
 ミニ・レッスンで何を教えてよいのかが分からない
 子どもたちとのカンファランスがこなしきれない
 校正の同じ項目でも、できている場合とできていない場合がある
 ワークショップが沈滞気味になる
 作品を読み上げたい子どもたちが多すぎる(あるいは希望者がいない)
 子どもたちが作品の修正をしない
第11章 年間を通しての展望
 年間計画
おわりに
訳者あとがき
原書に紹介されている文献一覧
本書(翻訳書)でのみ紹介されている文献一覧
資料1 書く題材をさがす(1)
資料2 書く題材をさがす(2)
資料3 カンファランスを記録する(1)
資料4 カンファランスを記録する(2)
資料5 「完成原稿ファイル」に目次をつける
資料6 完成原稿を自己評価する
資料7 クラス全体のカンファランス状況を記録する
資料8 「読み」を「書き」に活かす
資料9 校正のチェックリストを使って校正する
資料10 校正のチェックリストの項目
資料11 小学校低学年の子どもたちの成長を評価する
資料12 小学校中・高学年および中学生たちの成長を評価する
資料13 自分の作品を振り返る
資料14 学期ごとに振り返る
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『効果10倍の〈学び〉の技法』 [書籍]


効果10倍の(学び)の技法 シンプルな方法で学校が変わる! (PHP新書)

効果10倍の(学び)の技法 シンプルな方法で学校が変わる! (PHP新書)

  • 作者: 吉田 新一郎
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2007/04/17
  • メディア: 新書


本書の「おわりに」において、共著者の一人である吉田新一郎さんは「『効果10倍の〈教える〉技術』の続編的な意味合いが極めて濃い内容」と解説しています。また、その中において、もう一人の共著者である岩瀬直樹さんのホームページ出会いのきっかけであったことも記されています。

そこで、岩瀬さんが執筆したと思われる「第3章 やっぱり変えるのは授業から——子ども主体の学びへ」を中心に紹介しましょう。「子ども主体の学び」を実現する授業として、9の技法が紹介されています。それぞれの概要を引用しながら、参考文献を示してみましょう。

■チーム学習
 「チームで、相互に信頼関係を築きながら協力し合って学習していく方法」
 「『何を』学ぶかというコンテンツ(内容)だけでなく、学習者同士が教え合ったり、『どのように』学ぶか、というプロセス(過程)に焦点を当てた学習方法」
  『テーマワーク』開発教育センター著、国際理解教育センター
  『「学び」で組織は成長する』吉田新一郎著、光文社新書
  『学習の輪』D・W・ジョンソン他著、二瓶社
  『「協同」による総合学習の設計』Y・シャラン他著、北大路書房

■テーマ学習
 「生徒たちが興味・関心の持てるテーマ(プロジェクト・課題など)を設定して、それを教科の枠を超えて学んでいく方法」
 「知識(が残り、活かす形で学べる)だけでなく、技能や態度面もしっかり押さえることができる」
  『学びの情熱を呼び覚ます——プロジェクト・ベース学習』ロナルド・ニューエル著、学事出版

■ワークショップ
 「本物になるプロセスを体験し、それを通して学ぶ」
 「教師があれこれ教えるのではなく、『実際にやってみること』を通して学ぶ」
  『「座りなさい!」を言わない授業――落ち着きのない子、大歓迎!』西川純著、東洋館出版社
  『ライティング・ワークショップ――「書く」ことが好きになる教え方・学び方』フレッチャー・ラルフ著、新評論

■マルチ能力
 「人々が仕事の中で使っている能力を調べ、整理した結果、少なくとも8つの能力がある」
 「マルチ能力を知り、授業プランを立てる際に意識してみるというシンプルな方法だけで、教師は教え方の引き出しが数倍に増える」
  「マルチ能力」が育む子どもの生きる力
トーマス・アームストロング著、小学館
  『MI:個性を生かす多重知能の理論』
ハワード・ガードナー著、新曜社

■“思考の6段階”で問いかけ方を考える
 「教師が問う質問の質を変えれば、授業は一気に変わってい」く
 「子どもたちも効果的な質問をつくり出す」
  『ワールド・スタディーズ』サイモン・フィッシャー他著、国際理解教育センター
  「考える力」はこうしてつけるジェニ・ウィルソン著、新評論

■異学年の教え合い・学び合い
 「人に何かを教えるときにこそ、一番理解することになり、したがって、多くのものを頭の中にとどめることになる」
 「学年が違うと教える・学ぶという関係が、同学年よりもスムーズに運ぶ」

■本当の仕事をすることが、学びも本物にする
 「小学生向きの、校内で本当の仕事に従事することと、中学生・高校生向きの、校外で本当の仕事に従事すること」
 「小学校中学年では校内郵便局や売店の運営や校内の案内表示、デコレーションなど、高学年では印刷、低学年の世話、学校新聞の発行など」

■インターンシップが、学ぶ意欲をかき立てる
 「実社会で行われている仕事に実際に従事する形で、仕事と学校での学習を関連づけながら学んでいく」
 「仕事で使われている知識や技能や態度を、各教科で押さえなければいけない知識・技能・態度と結びつける」
  『図解 はじめる小学校キャリア教育』三村隆男著、実業之日本社

■クラス・ミーティング
 「子ども主体の会議」
 「クラスで起きる様々な問題を教師の手を借りずに、自分たちで解決できるようになる」
  『対立がちからに―—グループづくりに生かせる体験学習のすすめ』
: ウイリアム・J・クレイドラー他著、C・S・L
  『会議の技法』吉田新一郎著、中公新書
  『クラス会議で子どもが変わる――アドラー心理学でポジティブ学級づくり』ジェーン・ネルセン、リン・ロット他著、コスモスライブラリー

これ以外にも、非常にたくさんの参考文献が紹介されています。吉田さんの『効果10倍の〈教える〉技術』同様、よりよい「学び」について考える情報の宝庫です。

はじめに
第1章 まずは大人の学びを変えよう!——従来の「研修」からの脱却
 シンプルな3つの原則で教師のモチベーションが高まる
 研究協議を、より学びのあるものに
 振り返り日誌=ジャーナルのすばらしさ
 気の合う同僚との相互コーチング
 アクション・リサーチ
 学校内に学習サークルづくり
 まじめに雑談をする時間の確保
 ブック・クラブ(読書会)
 学校のリーダーとしての校長
第2章 こんなにシンプルな方法で、大人の学びは変わる!——情報交換・コミュニケーション・意思決定の仕方を変える
 会議の改善
 たまにはお互いの役割を交換してみる
 お役立ちニュースレターの発行
 プロジェクト・チーム
 生徒たちの作品を学校に残しておく
 状況を頻繁にチェックする
 親とのコミュニケーションは真剣に
第3章 やっぱり変えるのは授業から——子ども主体の学びへ
 チーム学習
 テーマ学習
 ワークショップ
 マルチ能力
 “思考の6段階”で問いかけ方を考える
 異学年の教え合い・学び合い
 本当の仕事をすることが、学びも本物にする
 インターンシップが、学ぶ意欲をかき立てる
 クラス・ミーティング
第4章 評価が変わると授業が変わる、学校が変わる!
 テストやレポートの返し方を変える
 評価は、教師のものと自己評価を併記する形で
 すべての生徒ができるための評価とサポート体制
 通知表に代わる「生徒が主役の三者面談」
 逆さまデザイン
 いったい「卒業する」ってどういうこと?
 生徒にも教師にも学びのある授業評価
 評価する側にも、される側にも学びのある教員評価
第5章 保護者が変える、保護者と変える
 親も生徒も参加してつくる学校の教育目標
 親が活躍できるチャンスを提供する
 親や地域の授業参加が子どもの学びを豊かにする
 親に子どものサポートの仕方を学んでもらう
 子どものエキスパートである親に情報提供してもらう
 親が学校運営に参加し、学校を変える
 コミュニティスクール
第6章 制度・仕組み・ハードを変える
 教室、学校全体を生徒にとってもっと居心地のいい空間に
 ホームルーム制からアドバイザー制へ
 時間割は、与えられるものではなく、つくり出すもの
 職員室を、研究室と喫茶室に
 学年担任制
 図書室を学びの基点に
 生徒たちが学校の運営に関わる
おわりに
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『効果10倍の〈教える〉技術』 [書籍]


効果10倍の“教える”技術―授業から企業研修まで (PHP新書)

効果10倍の“教える”技術―授業から企業研修まで (PHP新書)

  • 作者: 吉田 新一郎
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2006/02
  • メディア: 新書


吉田新一郎さんが「この本の中で、最も中心的な位置づけとなる部分」という第3章には、新しい「学び」のサイクルが、従来の流れと比較される形で示されています。「研修」を例にしたモデル図から項目を引用してみましょう。

伝統的な研修モデル
 専門家(講師・教師)による知識や情報の提供
      ↓
 話を聞いたときはそれなりに感激したり、興奮しても
      ↓
 仕事や生活で活かすことはできず、いつの間にか忘れてしまう

新しい研修モデル
 (1)ひきつける(関心を喚起する段階)
      ↓
 (2)インパクトのある体験や情報の提供
      ↓
 (3)体験や情報の振り返りと共有
      ↓
 (4)応用をする(練習する段階)
      ↓
 (5)プログラム全体の振り返りと評価
      ↓
 後は、サイクル(2)ないし(4)へ(継続的に情報交換や相互にコーチングができる状況があれば、さらによく学べる)

このサイクルを示した上で、吉田さんは「従来の流れを、この新しい流れに当てはめて時間の割り振り」を対比しています。吉田さんの示す数字を要約してみましょう。

     従来の流れ  新しい流れ
  (1)0%     10〜15%
  (2)93〜95% 20%
  (3)5%     20%
  (4)0%     40〜45%
  (5)2%     5%

「インパクトのある体験や情報の提供」に偏っている従来の学びではなく、「ひきつける」「振り返り」「応用」などを意識した学びが提唱されています。

たとえば、「ひきつける(関心を喚起する段階)」で効果的な活動として、「氷のように硬い雰囲気を溶かす」アイス・ブレーキングがあります。巻末の「資料編」には次の方法が紹介されています。

  誕生月で並ぶ
  二つのホント、一つのウソ
  あなたはどんな人ですか?
  3つのコーナー
  名前の意味や由来
  私にとって一番大切なもの
  私の推薦図書
  四つの人生のハイライト
  三つの願い事
  チェックイン
  共通点とユニークな点

また、「アイス・ブレーキングの事例を紹介している本やサイト」も挙げられています。

・『会議の技法』拙著、中公新書
・『最高のプレゼンテーション』ダグ・マルーフ著、PHP研究所
・『「考える力」はこうしてつける』ジェニ・ウィルソンほか著、新評論、第2章
・『いっしょに学ぼう』スーザン・ファウンテン著、国際理解教育センター、第3〜5章
・『いっしょにできるよ』ミルドレッド・マシェダー著、国際理解教育センター
・『参加型ワークショップ入門』ロバート・チェンバース著、明石書店、第5章
・『地球市民を育む学習』グラハム・パイク+デイビット・セルビー著、明石書店、第5章
http://www.faj.or.jp/facilitation/tools/

他にも、吉田さんの著書・訳書を中心に、関連文献が紹介されています。よりよい「学び」について考える入門書と言えるでしょう。

はじめに
プロローグ 私の「教え方」史
   教え方を見直す二つの出合い
   日本には「研修のプロ」が存在しない
   「研修の終わりが活動の始まり」となるためには
第1章 間違った習慣からの脱出
 1 これまでの教え方・学び方
   これまでの教え方は「工場モデル」
   雰囲気は、「硬くて、暗くて、真面目で、楽しくない」
   「学びの主役は生徒や受講者」のはずが……
   講義を聞くだけでは一〇パーセントしか身につかない
   標準化と管理に終始
   バラバラ・ブツギリのプログラム
  「行動主義」の考え方に基づいた教え方
 2 これからの教え方・学び方
   「学び」は楽しく、エキサイティングなもの
   楽しむ部分と、真面目な部分の両方が大切
   多様な選択肢からよりよい方法を採用する
   全体的・統合的・開かれたシステム・結果重視
   変化の速度が急速な時代には構成主義に基づく「学び」を
 3 各分野で高まる「学び」への期待
   学校教育でも「間違った習慣」を認めた
   生徒、教師たちが抱く「理想の授業」とは
   組織における「いい研修会、悪い研修会」
   社会教育や生涯教育で期待される条件
第2章 よりよい「学び」をつくるための5つのポイント
 1 人間関係をどう築くか
   性善説と性悪説に立った「人の捉え方」
  教える側の姿勢で結果は大きく変わる
 2 学びの原則
   「学び」の質と量を左右する九原則
   「学びの原則」に従った教え方とは
 3 学びのスタイル
  学習者に合った教え方が重要
   コルブのモデル——わかりやすい学び方の四分類
   グレゴークのモデル——好み、得意に着目した四分類
   4MATシステム——右脳・左脳の機能の違いを盛り込む
   学びの星モデル——企業幹部の「学び」から考案された方法
 4 マルチ能力
  人間が生きるために使う八つの力
   多様なアプローチを無視すると「学び」は伸びない
 5 変化の原則
   ムダを省く七つのポイント
第3章 「学び」のサイクル
 1 従来の流れ
   結果は各人任せという「間違った前提」
 2 新しい流れ——「学び」のステップないしサイクル
  「やってみる」「振り返る」に重点
  (1)ひきつける(関心を喚起する段階)
   「学びの主役」という意識を与える
    〈1〉プラスの雰囲気づくり
    〈2〉仲間づくり
    〈3〉学びの準備
  (2)インパクトのある体験や情報の提供
   講義は聞き手とレベルが同じときに最も効果的
   学校教育、社会教育の場合
   会議を効率化・活性化するための職場研修
  (3)体験や情報の「振り返り」と「共有」
   「三つのWhat」「マッピング」「たとえ」
  (4)応用する(練習する段階)
   身につけ、実行するための方法
   「批判的な友だち」の進め方
  (5)プログラム全体の振り返りと評価
   同じ間違いを繰り返さない
第4章 仕事や生活に活かす
 1 職場や生活で活きる研修プログラム
   学んだことのたった一割しか活かされていない
   なぜ職場に戻ると実践できなくなるのか
 2 研修で学んだことが実際に使われるための条件
   職場での共有が鍵
 3 研修を仕事や生活に活かしてもらうための具体的な方法
   研修前・中・後の多様な方法を組み合わせる
 4 マトリックス——研修を活かすためのキーパーソンは誰か?
   企業では「研修前」「上司」が重要
   参加者を主役にするために、企画者・講師がサポート
 5 研修以外にもある多様な「学び」の方法
   「数人」「手軽」「継続的」が実践につながる
第5章 「学び」をサポートするためにすべきこと
 1 問いかけを基調にした教え方
   疑問点を洗いだし、答えを見つけさせる
   思考を刺激するのが「いい質問」
   質問で受講者の話す時間を増やす
 2 思考力(創造力・批判的思考力)を養う教え方
   思考の六段階に対応した質問をする
   創造力を養う「末広がりな質問」
   批判的思考力——重要なものを見極める力
 3 よりよい人間関係を築くスキル
   「学びのコミュニティー」をつくる八つのポイント
 4 よりよい教師・講師になるためには?
   日ごろからできること
資料編
   アイス・ブレーキングの方法
   ユニークかつ効果的な教育方法
   多様な評価法
   創造力を育む八つの方法
   批判的思考力を育む五つの方法
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『授業記録の技術』 [書籍]


授業記録の技術 (教育技術文庫)

授業記録の技術 (教育技術文庫)



授業記録を「どう書くか」、著者の高橋勲さんは「四つの原則」を示しています。

原則1 主な発問・指示は枠で囲め
原則2 記号を使って読みやすくせよ
原則3 中学生にもわかる文章を書け
原則4 積極的に加工せよ

原則1については、『実践研究論文の書き方』『応募論文の書き方』(いずれも明治図書)などで、何度も強調されていることです。

原則2については、藤岡信勝さんが「社会科授業の追試で何が見えてくるか」『教育科学社会科教育』297号臨時増刊において示した記号が引用されています。たとえば、「  」が「子どもの発言」、『  』が「教師の発言」、……が「発言中の間」などです。

原則3については、宇佐美寛さんの『論理的思考』(メヂカルフレンド社)から原則が引用されています。「なるべく短く書く」「なるべく主語をあらわに書きこむ」「文相互をつなぐ語句をなるべく入れる」などです。

原則4については、野口芳宏さんの論文(『現代教育科学』第394号)、二杉孝司さんの論文(教育科学社会科教育』第335号)を手がかりに、「不要なものは切り捨てよ」「積極的に描写せよ」「行為の意味を説明せよ」というポイントを示しています。

このように、高橋さんは授業記録に関する様々な先行文献を踏まえて、コンパクトに原則やポイントをまとめています。たとえば、藤岡信勝さんが「授業記録の条件」として挙げた「伝達可能性」「再現可能性」(『授業研究』1986年3月号)や「ストップモーション方式」(『教育技術研究』第1号)についても紹介されています。授業記録について、一通りの情報を知りたいときに便利な本です。

まえがき
Ⅰ カンタン授業記録術
 一 カンタン授業記録のすすめ
  1 記述方法は自由
  2 継続的に書こう
 二 究極の、ものぐさ授業記録術
  1 ものぐさ授業記録術
  2 究極の、ものぐさ授業記録術
 三 学級通信に授業記録を載せよう
  1 書くことで上達する
  2 学級通信に載せるポイント
  3 学級通信「だいじょぶだぁ」
 四 法則化論文を書こう
  1 気楽に、まず書いてみよう
  2 法則化論文「オ母サン」(草野心平)
Ⅱ 授業記録とは何か
 一 授業記録の条件
  1 実践記録と授業記録
  2 授業記録の性質
  3 授業記録の条件
 二 何のために書くか
  1 授業の腕を上げる
  2 自分の理論を創る
  3 事実で勝負する
Ⅲ 授業記録の原則
 一 何を書くか
  1 三つの原則
  2 四つのポイント
 二 どう書くか
  1 四つの原則
Ⅳ 機器で授業を記録する技術
 一 テープに記録する技術
  1 テープの利点
  2 授業録音の原則
 二 写真で記録する技術
  1 写真の利点
  2 授業写真撮影の原則
 三 ビデオで記録する技術
  1 ビデオの利点
  2 授業撮影の原則
  3 ビデオカメラの設置場所
Ⅳ 「日常的」授業記録の技術
 一 ノートに記録する技術
  1 ルーズリーフを使おう
  2 ノートの使い方の例
 二 用紙一枚記録法
  1 B4一枚におさめよう
  2 用紙一枚授業記録の例
Ⅵ 「非日常的」授業記録の技術
 一 他人の授業を見て記録する技術
  1 一人で記録する技術
  2 複数で記録する技術
 二 テープ起こしの技術
  1 テープ起こしのポイント
  2 なるべくテープを回さない授業記録へ
 三 ビデオ起こしの技術
  1 ビデオ起こしの利点
  2 ストップモーション方式
Ⅶ 授業記録の問題と課題
 一 今での授業記録どこが問題か
  1 授業記録、四つの型
  2 T−C型授業記録のどこが問題か
  3 部分描写型授業記録のどこが問題か
 二 これからの授業記録に望まれること
  1 授業解説型授業記録を
  2 授業批評型授業記録を
  3 上達論のある授業記録を
あとがき
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『応募論文の書き方』 [書籍]


応募論文の書き方 (法則化ブックレット)

応募論文の書き方 (法則化ブックレット)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 明治図書出版
  • 発売日: 1988/03
  • メディア: 単行本


「教育技術の法則化運動」初期に刊行された「法則化ブックレット」の1冊です。このシリーズの「まえがき」で、代表の向山洋一さんは「目標論、運動論、組織論、企画論、情報論、文章論、研究論、上達論などの生の情報がつまっている」と述べています。本書は、五つの法則化サークルのメンバーによる論文集になっています。

日向教育サークルの鈴木健二さんは、『実践研究論文の書き方』(明治図書)で向山洋一さんが書いている内容などを押さえながら、法則化論文の書き方を例示しています。

新潟法則化研究会の松野孝雄さんは、「発問・指示だけをぬき出しても、授業がわかるように書く」ことで、授業の構成をわかりやすくする「上級編の書き方」を示しています。

岡山Shingqriサークルの岩佐勝弥さんは、「発問」「指示」とともに「留意事項」の書き方を次のように示しています。

(1)授業の骨組を、教師のことば(発問・指示・説明)を中心にして組みたててみる。(ワクで囲む)
 (留意事項を特にワクデ囲んで示してもよい)
(2)(1)のそれぞれの項目に対しての子供たちの反応、(結果)といったものを、子供のことば、(発言、書いたもの)を用いたりして描写する。留意事項をその中にさりげなく入れてもよい。)

たとえば、「ノートに考えを箇条書きをしなさい。(五分後に発表させる)」という指示をワク囲みしたり、「五分後、子どもたちに意見を発表させた。」と描写したりして、留意事項を示すというのです。(2)のような方法が具体的に示されているので参考になります。

風雲・千葉西の横山験也さんは、教師の発問・指示・説明を枠で囲むだけではなく、「さらに、子ども達の様子、子ども達への対応を書く。」という原則を示しています。また、子ども達から出た数多くの発表など、「横に並べて書ける内容は、箇条書にするとよい」という書き方も示しています。

中学国語法則化サークル「富山・有磯海」の寺崎賢一さんは、論文で「価値ある内容」を書くためには「教科内容と授業スタイルとを区別」する必要を述べています。「文芸研」「分析批評」「構造読み・形象読み・題名読み」「一読総合法」の教科内容を踏まえた上で、大西忠治・大村はま・向山洋一・野口芳宏といった名人の授業スタイルの分析を試みています。

こうしてみると、「発問」「指示」の枠囲みが強調されがちな法則化論文ですが、決して、それだけではないことも分かります。実践記録の書き方として、改めて学ぶべき内容も多いと思われます。

まえがき
応募論文は誰でも書ける
 ◆日向教育サークル……鈴木健二
  1 情報を収集する
   授業の展開メモ
   板書のメモ
   子どもの書いたカード
   学級通信
   『小学校学級経営』一九八六年九月号
  2 応募論文の種類
  3 応募論文を書く時のチェックポイント
  4 手順を意識していない論文
  5 応募論文を書く
 ◇サークル紹介
「初級編」・「中級編」・「上級編」それぞれのポイント
 ◆新潟法則化研究会……大森修・遠藤春信・松野孝雄
  1 応募論文は法則化の屋台骨
  2 応募論文の書き方・初級編
   志があれば大丈夫
   授業を記録する
   文を書く原則をふまえよう
   これぐらい書ければ合格
  3 応募論文の書き方・中級編
   代案を示せるようになるまで
   追試で見えてくること
   修正部分を示す追試論文の書き方
   欠点が見えてきて上る技量
  4 応募論文の書き方・上級編
   子どもの思考の過程がわかるように書く
   授業の構成がわかるように書く
 ◇サークル紹介
誰に向けて何を書くか
 ◆岡山Shingqriサークル……岩佐勝弥
  1 誰に向けて書くか
  2 何を書くか
   範囲—おそろしく広い
   選択基準—自分の判断で、「よい」と思ったものを
  3 どう書くか
   論文の大ワク
   表現法
   各項目の書き方
  4 多くの応募を
 ◇サークル紹介
憶さず、書こう
 ◆風雲・千葉西……横山験也
  1 構成・書式を設定する
  2 子どもの様子、子どもへの対応も書く
  3 表にする
  4 箇条書きにする
  5 ファックス教材は、そのまま載せる
  6 『追試』論文の書き方
  7 文の書き方
 ◇サークル紹介
「価値ある内容」を書くには
 ◆中学国語法則化サークル「富山・有磯海」……寺崎賢一ほか
  1 〈表現の原理〉〈認識の原理〉をおさえて
   文芸研の西郷竹彦氏の場合
   「分析批評」・向山洋一氏の場合
   「構造読み・形象読み・題名読み」大西忠治氏の場合
   「一読総合法」の場合
   今後の課題
  2 〈授業スタイル〉の論文を
   〈授業スタイル〉とは何か
  3 応募論文の実際
  4 〈表現の原理〉についての補足
 ◇サークル紹介
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『実践研究論文の書き方』 [書籍]


実践研究論文の書き方 (法則化ブックレット)

実践研究論文の書き方 (法則化ブックレット)

  • 作者: 向山 洋一
  • 出版社/メーカー: 明治図書出版
  • 発売日: 1988/05
  • メディア: 単行本


「教育技術の法則化運動」初期に刊行された「法則化ブックレット」の1冊です。このシリーズの「まえがき」で、代表の向山洋一さんは「目標論、運動論、組織論、企画論、情報論、文章論、研究論、上達論などの生の情報がつまっている」と述べています。本書は、特に教師の文章論について論じた内容になっています。

「具体的な場面を描写せよ」において、向山さんは「教育技術の法則化論文にほしい」ものとして、次の4つを挙げています。

1 発問
2 指示
3 配慮事項
4 効果(結果)

1・2に比べると、3・4は見落とされているような気がします。そこで、「配慮事項」「効果(結果)」について、向山さんはどのように述べているかを見てみましょう。

指示 「考えたことを箇条書きにノートに書きなさい」

 だが、これだけでも不足である。いったいノートに何分位書かせたらいいのか。三〇秒なのか、二分なのか。あるいは五分なのか。それとも一〇分なのか。
 どうでもいいようなことだが、実はこのようなことにも法則はある。「何分必要である」という原則がある。
 でたらめでいいわけではない。
 このようなことを書くのも必要となる。そこで「配慮事項」といったようなことが必要になる。

指示 「考えたことを箇条書きにノートに書きなさい」
(五分後に発表させる)

「発問」「指示」と並べて「配慮事項」が示されているのが興味深いです。『教育技術入門』(明治図書)では「注意・配慮事項」となっていました。その本の中でも、向山さん自身が「指示・発問にウエイトがかかりすぎている」と述べています。授業全体の「システム」を明示するためには、「配慮事項」が必要なはずです。けれども、すべての項目を示すと、かえって分かりにくくなります。そこで、「システム整理法」が求められるのだと思われます。(拙稿「システム整理法とエピソード描写法」『授業づくりネットワーク』2009年8月号参照)

さて、向山さんの「効果(結果)」も見てみましょう。

 このような方法で授業をやった結果「どうなったのか」ということも必要である。
 一番良いのが数値で示せることである。
 「三名の跳べない子が、全員跳べるようになった」というように書かれてあればよくわかる。
 しかし、教育の結果を数値で明確に示せるものは少ない。したがって、「子どもの作文」などで示すことも一つの方法となる。
 そこまでもいかない時がある。教師の感覚のようなものだ。「今までのやり方とくらべて集中度がました」「子どもたちは熱中していた」というような書き方である。これもよい。

やはり、『教育技術入門』では「効果(成功率)」として示されています。(結果)が(成功率)となっています。つまり、向山さんは「効果」を数値で示せるものに限定したと思われます。

それでは、「子どもの作文」や「教師の感覚」など、数値で明確に示しにくいものはどうなったのでしょうか。『教育技術入門』では「エピソード」という項目が5番目に位置づけられています。授業の「効果」、特に数値で示しにくい「結果」を、どのような「エピソード」で描写すべきか。向山さんの文章論から学ぶべきものは多いです。

向山さんの「具体的な場面を描写せよ」という文章は『教え方のプロ・向山洋一全集54 教育実践を深める教師の文章作法』(明治図書)でも読むことができます。

なお、本書は『授業研究』誌に連載された「添削指導による実践研究論文の書き方」を中心に構成したものです。向山さん以外にも、石黒修さん・石岡房子さん・根本正雄さん・野口芳宏さん・大森修さんといった蒼々たるメンバーの論文も掲載されています。実践研究論文をいかに検討すべきか、勉強になります。

まえがき
Ⅰ 法則化論文はどこが違うか
 一 わかる・読まれる研究レポートの条件……向山洋一
  1 読まれないレポート
  2 読まれる文章の二条件
  3 四つの心掛け
  4 研究レポートの四つの条件……向山洋一
 二 具体的な場面を描写せよ
  1 教師の文章はひどい
  2 何を書けばよいか
 三 どんな時に教師は成長するか……向山洋一
  1 追試で腕が上達する
  2 細分化して書く
 四 伝えるべき情報、すぐれた技術・方法を……向山洋一
   —「サッカー指導」の二本の論文—
  1 初参加と三回目
  2 二つのレポートの比較
Ⅱ どうすれば読まれる論文になるか
 五 主張したいことを一つにしぼる……石黒修
  1 三つの原則
  2 三つの留意点
  3 添削例
  4 テーマを一つに
 六 論文はだれでも書ける……石岡房子
  1 応募論文はだれでも書ける
  2 このように書き直してみよう
  3 論文を書くと見えてくる
 七 一事で一本……佐々木俊幸
  1 読者を意識しよう
  2 シリーズものにしよう
  3 細分化してみよう
Ⅲ どう書けば実践が分かち伝えられるか
 八 誰もが追試できる論文を書く……根本正雄
   —方法・根拠・結果を示す—
  1 中学生でもわかる論文を書く
  2 方法を具体的に表現する
  3 根拠を明示する
  4 効果を明示する
  5 分かち伝えられる表現
  6 誰でも追試のできる論文
 九 「追試」論文をどう書くか(Ⅰ)……野口芳宏
  1 「追試」とはどういうことか
  2 「追試」自体に価値がある
  3 「追試論文」は、先行実践を前進させるために書く
  4 追試論文の書き方
  5 追試論文の事例研究
 一〇 「追試」論文をどう書くか(Ⅱ)……大森修
  1 論文のコンセプト
  2 「追試」も実践
  3 西川氏の「追試」論文
 研究レポート・こうすればよくなる=診断と治療例……根本正雄
  1 若い教師に共通な論文
  2 内容をわかりやすく表現する
  3 「追試」を意識して書く
あとがき
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『教育実践記録論』 [書籍]


教育実践記録論 (1980年) (あゆみ教育学叢書〈7〉)

教育実践記録論 (1980年) (あゆみ教育学叢書〈7〉)



「教育実践記録とはなにか」、著者の坂元忠芳さんは「教師の生活綴方」(「実践記録をどう評価するか」『勝田守一著作集』第三巻)としての側面にも触れながらも、「実践記録を教師自身が書くだけでなく、それを発表し、さらにみんなで分析し、批評しあうのは、どういう意味があるのだろうか」と問題提起しています。坂元さんは次のように言います。

教育実践記録の分析と批評(相互学習と相互批評)とは、記録を提出した当の教師にとっても、分析し、批評する当の批評者にとっても、決してなまやさしいことではない。
 当の教師にとっては、二度とやりなおしのきかない部分を含めて、自己の実践がきびしい批評の対象にすえられることを意味する。また、分析し、批評する当の批評者にとっては、実践的におなじ問題・課題が、当人にはねかえってくることを意味し、なまはんかな第三者的批評をゆるさない、科学的真実性と思想的責任が要求される。
 教育実践記録の分析と批評は、だから必然的に、記録を提出した人とそれを分析し、批評する人びととの相互批評の形をとる。そして、それをとおして、記録された事実が吟味されるだけでなく、記録されていない事実が堀りおこされる。また、記録した本人が気がつかなかった事実がみんなの前に出され、つぎに展開されるべき新しい実践の視点が、いやおうなしに、その事実をとおして明らかにされる。実践の法則と典型の発見は、この努力のくりかえしの結果生まれるのである。記録は、ある事実が出されているという意味では客観的なものであるが、それを、実践者がある基準にもとづいて選択し、記録し、提出しているという意味では、その事実に対する記録者の主体的な態度と思想が表現されている。しかし、その態度と思想もまた、集団のなかで分析され、批評されることをとおして、客観的なものにされていくのである。

「実践の法則と典型の発見」について、坂元さんは「内面的テキストの創造」を訴えています。「内面的テキスト」とは「実践記録という一つのテキストにたいするもう一つのテキスト」と説明されています。実践を「一般化」する作業が含まれる「内面的テキストの創造」について、次のように述べられています。

 「典型」とは個別の実践のなかに、実践の発展の可能性をはらんだ、一般的法則性が貫かれていること、そして、その一般的な法則性の具体的なあらわれの意味——二度とくりかえせない——を明らかにすることである。内面的テキストは、どんなに平凡にみえる記録のなかにもその実践を成立させている、または、実践に欠落していることがらの必然的条件を明らかにするのである。それは概念によって理論的に一般化することにとどまらず、具体的な実践の形象のもつ一般性を明るみに出す作業なのである(『勝田守一著作集』「研究集会というもの」三巻、二〇〇ページ)。

教育実践記録を書くこと、および、分析・批評することの意味が、くりかえし訴えられています。しかし、坂元さんの主張を真に理解するのは、なかなか難しいことかもしれません。「はしがき」によれば、本書は「千葉県東葛民主主義教育研究会主催の講座子どもの発達と教育実践』で話したことをもとにしてまとめたもの」だそうです。この講座は、参加者に書いてもらった「実践記録の検討」を中心に1年間、続けられたのですが、「途中、参加者がしだいに少なくなり、小人数の研究会として組織するほうがよかった」という反省が出るような状況だったようです。「現場の先生方と共同して行なった一つの教育実践記録検討論」という本書の試みが、教師修業の方法として成立するのかどうか、じっくりと考えてみたいところです。

はしがき
序章 実践記録とはなにか
 一 教育実践とはなにか
 二 教育実践の構造
 三 発達の原動力としての内的矛盾
 四 教育実践の今日的課題
 五 教育実践記録とはなにか
第一章 実践記録分析の基本的視点
 一 本音を記録すること
  〈実践記録〉二年生の子どもたちと私 鬼沢利子
 二 目標と現実との矛盾
 三 個人の行動と指導
 四 記録を分析する五つの視点
第二章 実践記録のドラマ
 一 実践記録のドラマ性
  〈実践記録〉人形げきのとりくみ 天貝安男
 二 実践の問題点
 三 矛盾の顕在化
 四 個人に対する働きかけ
 五 記録の構造と問題点
第三章 教育調査と実践記録
 一 子どもの生活把握の方法
  〈実践記録〉「朝の生活しらべと生活リズムの確立」のとりくみを中心に 佐藤香代子
 二 実践の目標
 三 実践の発展性
 四 記録にみられるあるもどかしさ
 五 実践の問題点
第四章 指導の構造と実践記録
 一 新しい問題の追求
  〈実践記録〉子どもの基礎学力とかけ算・わり算のとりくみ 内山富佐子
 二 基礎学力の現状
 三 基礎学力の習得
 四 計算の理解と習熟
 五 学習の転移
 六 基礎学力と九・十歳の問題
第五章 実践記録の時代性と環境性
 一 実践記録の評価
  〈実践記録〉浦安の実践をふりかえって 安藤弘
 二 教育実践と子どもの「生き方」
 三 分析の切り口
 四 実践の目標
 五 教育実践の本質
 六 個人をめぐる問題
終章 実践記録の記述と分析の方法
 一 実践記録を書くことの意味
 二 実践記録の方法
 三 記録の焦点化と構造化
 四 実践記録の表現
 五 実践記録の批評
 六 内面的テキストの創造
あとがき
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『授業記録のとり方』 [書籍]


授業記録のとり方 (1963年) (授業の技術〈別巻〉)

授業記録のとり方 (1963年) (授業の技術〈別巻〉)

  • 作者: 砂沢 喜代次
  • 出版社/メーカー: 明治図書出版
  • 発売日: 1963
  • メディア: -


「授業記録は何のためにとるか」、本書の執筆代表である砂沢喜代次さんは、その理由の一つを次のように述べています。

教師が実践を検討するためには、実践を事実としてとらえ、自分からつき離してみなければならない。教師の実践というのは、子どもたちの発達を促すために、どのような教材を、どのような価値観(めやす)で選択して、それを子どもたちにどのように教授していくか、子どもは、それに対応してどのような学習を展開していくかという、「教授・学習過程」(それは生活指導と教科指導のすべての過程を含むもの)にかかわっている。よく「子どもは教師にとって鏡である」とか言われてきたが、その「生き写し」や「鏡」は、見えた瞬間に消え去ってしまうようなものであっては、事実を事実として一般化し、長く保存して検証することに耐えられない。どうしても事実の記述分析という仕事が、そこに伴なわなければならないのである。

そして、各教科の実践家が「授業記録はこうしてとっている」という事例を紹介しているのですが、ここでは里野清一さんの方法を紹介しましょう。小学3年の社会科「安全なくらし」という単元の第1時間目の授業記録を引用します。

(1)(学校付近で、一番交通のはげしい国電北千住駅前通りを、地図の上で指摘しながら)この道を渡る人、手をあげてごらん。——手をあげた人に——飯田さん、あなたうまく渡れますか。
飯田 わたれます。
 (実は、渡れないと答えてもらいたかった。車の往き来がはげしいためにうまく渡れないと行ってくれれば、そこから交通安全の問題を考えさせることができると思っていたのであるが、ウカツにも緑のおばさんがいることを計算に入れておかなかった。そこで、急に話の進め方を変更し、逆に緑のおばさんが立たざるを得なくなっている現実に眼を向けさせ、そこから交通安全問題を考えさせてみようと思い、次のような質問を重ねていった。
(2)それは緑のおばさんがいるからだね。もし、みどりのおばさんがいなかったらどうだろう。あの道は——岡本さん(この子も駅前通りを横断してくる子の一人である)はどうですか。
岡本 あの——あたし、たいてい朝学校にくるときは、うらからくるのよ。時計やさんのところをずうっときて、みどりのおばさんのところで渡るのよ。とってもいいわ。(安全に横断ができてありがたいという意味)
(3)自動車にひかれなくてね。
岡本 きょう来るときは緑のおばさんがたっていなかったの。
(4)ああ、きょうおひるやなんかくるときには。(実はNHKテレビの中継の都合でこの日だけは午後から登校させたので、緑のおばさんが立っていなかったのである。しかし、この発言を適当にごまかしたのである。)はい、おすわりなさい。

授業冒頭の数分の記録ですが、特徴的なのは(  )の部分です。これは、授業者の里野さんが後で補足した説明です。なぜ、このような補足が行われているのでしょうか。里野さんは「子どもたちはどんな考え方をしているのか、また、その考え方を教師はどのようにとらえ、それに対して、どんな方向に、どのような方法で指導を進めたかといったことの分析のできる記録が必要」として、次のような授業記録の方法を提案しています。

子どもの発言の中で、特に重要だと思われることがあればそれをメモしておく。そして、授業の記憶のうすれないうちに、メモをみたり、そのときの子どもたちの顔を思い浮かべながら、授業の跡を記録し、さらに、そのときの教師の意図をできるだけ詳細に補説するようにしている。こうして残した授業記録は、結構あとの研究に役立っている。これも、ただ単に、教師と子どもの発言を書きならべただけの授業記録に終らせないで、研究目的にそった内容を、記録の中に補足したことがよかったのだと思っている。

里野さんの「補足」は、「ストップモーション方式による授業記録」の「コメント」のようなものだと言えるでしょう。本書は今から50年近く、『ストップモーション方式による授業研究の方法』(学事出版)から数えても30年近く前の本ですが、その当時にも「ただ単に、教師と子どもの発言を書きならべただけの授業記録に終らせない」と考えていた教師がいたのです。

授業記録は何のためにとるか 砂沢喜代次
 実践の記録化運動
  戦後の新教育と民間教育研究運動
  新教育批判と実践記録の登場
  教科指導と教育課程自主編成のための実践記録
 授業研究運動
  実践を客観化するために
  子どもの思考を育てるために
  学級づくり・学校づくりのために
 授業研究の方法
  研究方法の前提理論
  研究仮説の設定と分析の枠組み
  授業前の教材研究・児童研究・授業案作成
  授業中の観察と記録
  授業後の整理と分析
授業記録はこうしてとっている
 国語科授業の記録法1 小林喜三男
  「掛図」をつくって記録に残す
  レポート用紙に作業させて記録に残す
  「教師のノート」に転写させて記録に残す
  教科書に実践を記入して記録に残す
  子どものノートをもらって記録として残す
  研究発表をして記録に残す
 国語科授業の記録法2 鴻巣良雄
  授業を記録する目的は何か
  どのような記録法があるか
 社会科授業の記録法1 里野清一
  授業記録のむずかしさ
  授業記録の実際例
 社会科授業の記録法2 山下国幸
  わたしの記録のとり方
  全体計画の記録
  四月十七日の記録から—感想文の整理
  四月十九日の記録から—テスト分析
  四月二十五日の記録から—授業の計画と反省(一)
  五月六日の記録から—授業記録
  学級文種から
  六月二十八日の研究発表会から—実践の中間総括
  六月の記録から—授業の計画と反省(二)
  六月の記録から—創造活動
  歴史調査の記録から
  「小学校教師のための日本歴史」の批判から
  わたしの記録の欠陥
 算数科授業の記録法1 栗原九十郎
  子どもは生きている—はじめに—
  テスト用紙をそのまま使う
  教材配当表に記入する
  週案や年間計画表に記入する
  研究授業案・研究物の保存もたいせつ
  子ども個人の記録も
  座席表も使って
  えんま帳のくふう
  授業をありのままに描写
  記録を生かすくふう
  記録のあり方—おわりに—
 算数科授業の記録法2 飯塚昭雄
  役立つ記録をめざして
  度の三用法の指導記録
  乗法性の指導記録から
  線分図と立式との関係
  形式的な記録ではいけないということ
 理科授業の記録法1 大森平生
  自然発生的な授業の記録について
  意識的な授業の記録について
 理科授業の記録法2 沢井正美
  ある授業の記録
  授業の記録のとりかた
  授業記録の分析
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